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[旧市街の旧王宮]


[ワルシャワと言えば人魚]


[中央駅]

「予約の再確認:要」
彼にとって、リコンファームの必要な航空会社を使うのは久しぶりではなかろうか。旅行社から貰っていた案内書にはワルシャワのオフィスの電話番号が記載されていた。電話の苦手な彼は、到着時に空港で済ませてしまおうと考えていたが、ワルシャワ・オケンチェ国際空港に21:00過ぎに到着した頃には空港のオフィスがすぐに見つからず、諦めて中央駅近くの中級ホテルに転がり込んで寝た。なぜ彼が電話を苦手にしているかというと、英語が聞き取りにくいことや、身ぶり手ぶり筆談が使えないといったことにある。まぁ、リコンファーム程度なら決まりきった会話しかないので、一方的に名前とフライトナンバーを言ってしまえば済むのだが...。

翌朝、ホテルで朝食を済ませた彼は出かける前にと、部屋から電話をかけてみた。が、誰も出ない。何度鳴らしてもでない。何度かけてもでない。留守電にもなっていない...。

T:「×××航空のオフィスってどこ?」
しびれをきらした彼は、とうとうオフィスに直接行ってリコンファームすることにした。成田からワルシャワへ向かう途中のトランジット空港でのこと。トランジットオフィスの前には黒山の人だかりができていた。ざわめく彼等の話を聞きかじった限りでは、オーバブッキングで青くなっているらしい。幸い彼の乗るフライトではなかったので、無事にここワルシャワに着いているのだが、そんな場面を見た後では律儀にリコンファームしたくなるものだ。そんな事態になってしまえば、リコンファームしたから大丈夫ということもないだろうに...。

フロントのおばちゃんによると、中央駅正面の最高級ホテルにオフィスがあるということで、歩いて5分位とのこと。自信たっぷりの口振りだったおばちゃんだが、これまた大嘘で探してもありゃしない。あったのはLOTポーランド航空のオフィス。おばちゃんはこれと間違えたのだろうか...。

T:「×××航空のオフィスってどこ?」
チェックアウトでごった返す最高級ホテルのフロントで、無理矢理かき分けて前に出る彼。宿泊しているわけでもないのに、まったくもってずうずうしい奴だ。すかさずおねえさんが端末をたたいて調べてくれた場所は、そこから彼が泊まっているホテルの向こう側だった。うなだれること2秒ちょっと。ついでに教えてもらった電話番号は彼が持っているのと同じものだった。気を取り直しておもてにでると、そこに待っていたのは結構な雨。傘は持っていない。再びうなだれること3秒ちょっと...。
T:「まったくもー...。」
と、声に出してぼやいてみる彼。雨に濡れながらオフィスに辿り着く。さすが最高級ホテルのおねえさん、中級ホテルのおばちゃんとは一味違うなどと訳の分からないことを考えつつ中に入ると、そこには警備員らしきおじさんが立っていて、座って待ってろと言う。お言葉にあまえて腰をおろし、待ちながらオフィス内を観察していた。彼はここで、何度鳴らしても、何度かけてもつながらなかった理由を知る。スタッフらしき男が二人ほど居て、奥に入ったり出たりとせわしなく動き回っていた。その間電話は何度も鳴っていたが、誰一人出ようとしない。警備員のおじさんと目が合うが、にっこりと愛想笑いをするだけだ。5分程度待った後カウンターに呼ばれてリコンファームを無事すませた彼は、不満そうに鳴り続ける電話を指差した。それでも男は電話には出ず、悪びれる様子もなかった...。

彼は×××航空に乗ることを楽しみにしていた。個人旅行者には評判の航空会社である。いろいろな話を聞いたり読んだりしていた。値段の安さからバックパッカーによく使用されるが、彼は初めてだった。そして、トランジットオフィスで、はたまたワルシャワのオフィスで評判通りであることを少しだけ実感した彼は少々ご満悦な様子...。

T:「さてと...。」
小降りになった雨の中、彼は旧市街へ向かうバスを探して歩き出した...。

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