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[Taxi Driver]

T:「ほら、行くよ...」
こう言いながら、パピルス屋のすみで腰を落着けているTaxi Driverの手を引き上げていた。時差ぼけで疲れていた...。

この前の日の夜遅くに、London経由でここCairoに降り立った俺は、暗闇を宿探しするのも面倒くさいので、空港で客引きに適当な宿につれてきてもらった。が、この宿にはトラベルエージェントが待ち構えていて、全ての旅程の手配を任せてくれと言う。彼の名はモハメッドと言った。この手の方は、到着したばかりの個人旅行者をつかまえて、物価、相場のわからないうちに、「彼等にとって都合の良いお値段」で請け負ってしまおうというもので、度々お目にかかることができる。

お決まりの「日本人に書いてもらったノート」が登場。俺はこれを読むのが結構好きだ。「モハメッドはとても親切で信用できる」、「モハメッドのおかげで充実した旅ができた」などの中に、「こいつはふっかける」、「だまされるな」みたいなことも書いてある。彼は日本人旅行者の信用を得る道具として使うために、お客に日本語でいろいろ書いてもらうのだが、その内容がわかるはずもなかった。いいことしか書いていないと信じて疑っておらず、その自信たっぷりで得意気な顔を見ていると少々不憫に思ったりもする。

「自分が妥当と思える金額」以上のお金を払ってしまったことに気付いた旅行者が、たまに悪いことを書いたりしているのだが、良いことを書いている旅行者の中にも、「私は騙された」と書くのがくやしい、私だけ騙されるのはいや、等の理由で良く書いている人もいるとかいないとかという話だ。なんでこんなにも差があるかというと、そもそも「自分が妥当と思える金額」は人それぞれなわけなので、同じ金額に対する感じかたも人それぞれと言ったところだろう。つまり「自分が妥当と思える金額」よりも「彼等の都合の良い金額」が高かった場合に「騙された」ということになってしまうのだ。もっとも、とにかく安くあげたいなんて人は、彼等に頼った時点ですでに間違いだと思うのだが...。

こんな彼等だが、「彼等にとって都合の良いお値段」を払えば「親切」にはしてもらえるようだ。「彼等にとって都合の良いお値段」と言っても日本からツアーで来るよりは、安上がりにすることができるようだが。つまるところ、安全、安心、効率などを買うことなので、人それぞれに見合うところがあれば、日本からツアーに参加するのもよいし、彼等と仲良くするのも悪くないだろう。ようは上手につきあえばいいと言うことであり、やみくもに拒絶するべきものではないように思う。注意すべき点は、行きたくもないところに連れていかれないように、自分の意志をしっかり主張すること。全ての旅程の手配をまかせずに分割すること。こうしながら、他の旅行者と情報交換したりして相場をつかむ。あとは値切ってみたりすることを楽しみましょう。

で、俺は一応全部見積もってもらったが、「眠い」と言って寝てしまった。本当に眠かったのだ。考えるのも、話しているのもうっとうしかった。うそじゃない...。


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