005


[絵葉書娘]


[草のアクセサリー娘]


[かたかた娘]

娘:「これ買わない?」
遺跡を巡っているとつきものなのが、お土産を売っている子供達。まぁ、どこでも見かける風景だが、ここではあんまりしつこいのに出くわさない。いたってあっさりしている。俺が他にもっと強烈なところを知っているから、そう感じるだけかもしれないのだが...。

めずらしく、ちょっとだけ根気のある娘が二人。俺はいらないよーんとか言いながら歩く。あきらめて他の観光客のところへ行ったかと思うと、再び戻ってくる。これは?これは?といろいろ見せながらついてくる。

娘:「ほら、この絵葉書きれいでしょう?」
俺:「おっ、このレリーフはどこにあんだ?」
娘:「こっちよ、ほらあそこ、ねっ絵葉書と一緒でしょ?」
俺:「あっ、本当だ、さんきゅ」(写真を撮る)
娘:「ねぇ、この絵葉書買ってよ」
俺:「うーんとね、写真撮ったからいらない」
娘:(怒)
俺:(笑)

客商売もなかなか大変そうである。が、あるときこんな光景を見た。アンコールワットの絵柄の入ったTシャツを売っている男の子が3人、日本人の団体さんに声をかけたところ、一人のおばさんがそれをたいそう気に入り、十数枚お買い上げ。それにつられるように他のおばさん達が群がり、その子達の持っていたTシャツをほとんど買い占めてしまったのだ。このとき何故だかガッツポーズをする俺。

観光客が少なくて退屈そうな娘が三人。早々に、こいつは買ってくれそうもないやと思ったようで、無言でついてくる。なかなか人を見る目がある。一人が草で指輪を作って俺の指にはめてくれた。それを見ていた他の二人が私にだってそれくらいできるはと言わんばかりに、まけじと作り出す。そして、俺の指にはめてくれる。気がつくと俺の両手すべての指に草の指輪がはめられていた。すると次はブレスレッド。これはなかなか大作だ。このアクセサリーなかなか優れもので、草が乾燥すると結構しっかりしてきて、ちょっとしたものになる。すっかり着せ変え人形のようにもてあそばれる俺。むぅ...。

遺跡からでてくると、まだ歩くのにもおぼつかなさが見える幼い娘が一人。俺にむかって走ってくる。手に木でできたおもちゃのようなものを持っていて、彼女が走るとかたかた音が鳴る。

俺:すたすた...。(しらんぷりん)
娘:かたかた...。(ついてくる)
俺:すたすたすた...。(ちょっと急ぎ足)
娘:かたかたかた...。(ついてくる)
俺:すたすたすたすた...。(小走り)
娘:かたかたかたかた...。(ついてくる)
俺:すたすたすたすたすた...。(ぐるぐる回ってみる)
娘:かたかたかたかたかた...。(ついてくる)
俺:...。(とまってみる)
娘:...。(とまってじっと俺の顔を見上げる)
俺:...。(飴玉をあげる)
娘:...。(にっこり)

彼女は次なる獲物に向かってかたかたと走り去って行った。この日も空は青く、気持ちいい...。


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