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[デバター象]


[破風のレリーフ]

ここではバイクと言えば、ほとんどというか全てと言っても過言ではないほどホ○ダのドリーム号だ。以前載せたNavyの写真で彼がまたがっているのがそれで、これを持っていることはある種のステータスと言っても良い。後ろに横座りした女性を乗せていたり、さらに子供が一人二人乗っていたりという光景がそこかしこに見られる。

初日にプノンバケンで夕日を見て、暗闇の中Navyのドリーム号にまたがって帰るところだった。一台のバイクが横につけて走り、Navyと話をしだした。しばらくして、その後ろに横座りしている女の子が日本人であることに気付いた。彼女はここSiem Reapにはまってしまい、暇を見つけてはここを訪れているとのことで、現地の女性と同じような服装に身を包んでいた。何度も来ているので観光などはせず、もっぱら寺院に入り浸って昼寝を楽しんでいるとか。

その日俺が南の方をぷらぷらして来た話をすると、普通初めて来た初日にそんなとこに行かないと笑いながらも、それはいいところにつれて行ってもらったと言う。彼女にしてみれば、遺跡だけを観てまわって帰って行く観光客がほとんなのが残念でならないそうだ。 そんな彼女にこれ幸いとおすすめポイントを聞いてみると、「バンテアイ・スレイです。アンコールワットやバイヨンをはずしてでも必ず見て帰って下さい。」という言葉がかえってきた。

このバンテアイ・スレイは保存状態のよい彫の深いレリーフが有名であり、その昔某国の作家が「東洋のモナリザ」とも言われる美しいデバター像に魅せられ、盗んで持ち帰ろうとしたところ捕まったなどという話もある。と同時に離れた位置にあるために危険も多く、数年前にフランス人が殺されている。なんて話はガイドブックにお任せしましょう。

ある日Navyにバンテアイ・スレイに連れて行ってくれと言うと、そこへはもうUS$10もらわないと行けないと言う。彼の話では街から北に40kmに位置しているためにガソリン代のUS$5と、Policeに警備代US$5が必要とのこと。警備代ってある種のチップだろうか。はて...。とか思いつつも、とにかくそれで連れていってもらった。銃を持った警官でものものしいが、なるほどすごい...。などという話もよそにお任せしましょう。

さて十分満喫したあと、目の前の食堂で昼食をとる。退屈そうな店員の男がハンモックに寝そべりながらいろいろ話しかけてくる。ふと思い出したように胸からソーラー式カード電卓を取り出し、得意気に見せる。

男:「いいだろこれ、日本人にもらったんだ」
俺:「ちょっと見せてみ」
男:「こんなのこの辺じゃ誰も持ってないんだ」
俺:「ふーん」
男:「これって日本じゃいくらくらいなんだ?」
俺:「US$1くらいかなぁ」
男:「えっ...」(少々がっかりした様子)
俺:「あっ...」(しまった)

その電卓には「○○工業」と刻印されていて、無料で配られたものであることは一目瞭然だった。が、なにもこんなとこでそんな正直に言わなくても...。

ちなみに彼が言うには、ここまでバイクで連れてきてもらい、プラス他の遺跡巡りで1日US$15というのは、極めて妥当な値段だそうで、最近はもっとふっかける運転手が多いそうだ。こんな良心的なNavyだが、算数は苦手なので誰か電卓を...。


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