007


[Mette]


[Charlotte and Traus]


[Serge]


[Captain]

ファルーカ二日目、まったりとした時間が流れていく。四六時中話していられるわけもなく、俺は持参した本を読み、時折それを置いては辺りを眺め、他のメンバーの行動を目で追っていた。ルーマニアのおじいさんは釣り糸をたらしてから随分たつが、まだあたりはない。Captainはかじを取ったり、我々の食事を作ったり、それなりに忙しそうにしている。最年少好奇心旺盛なMetteはCaptainが食事の用意をしている間かじ取りを手伝い、暇を持て余しているCharlotteは俺の置いた本を拾い上げ、ぱらぱらとめくって挿し絵や写真から内容を想像しているようだ。Fionaは断食を実践していて日中は一切のものを口にしていないので、夜に比べるとテンションが低い。TrausはFelicityの膝枕でうとうとしている。

ときどき大きな豪華観光船が追い抜いていったりすれ違ったりする。Captainはその度にファルーカを端に寄せるのだが、それでも多少のゆれは仕方のないことだった。豪華観光船に乗っているのも所詮は我々と同じ観光客であり、彼等にとってもやっぱりファルーカはもの珍しいものであって、格好の被写体だった。それが通る度に、カメラを向ける人、手を振る人にみんなで愛想を振りまいていた。でも、それも最初だけだった。だんだん体を起こすこともなくなり、最後には見向きもしなくなってしまった...。

暑さも最高潮に達した頃、Trausがむくりと起き上がり「泳ぎたい」と言い出した。見た目より流れが早いというCaptainの説明を受け、ロープから絶対手を離さないことという条件で飛び込む。続いてFionaも水着に着替えて飛び込む。おいおい、気持ちよさそうだな...。水着の持っていなかった俺は、寝巻きのジャージに着替えて後に続く。泳ぐというよりは、ファルーカに引っ張られていると言った感じだが心地よい。他のメンバーは羨ましそうにしばらく眺めていたが、Charlotteが意を決したように飛び込む。おいおいもうつかまるとこないぞ...。それにお前それただの黒い下着だろ...。そんなこんなではしゃいでいると、釣り糸をたれたおじいさんがなにやら怒っている。魚が逃げるとでも言っているようだが、誰一人かまう者はいなかった。どうせ釣れないし...。

夜、ファルーカを岸につける。夕食後、どこからともなくアルコールが回ってくるが、下戸の俺はパス。各国宴会ゲームなんかをしていたが、後かたずけを済ませたCaptainが太鼓を持って歌い出し、月夜の下の宴は一気に盛り上がる。その独特のリズムと旋律は、Captainがしらふなのか酔っぱらっているのか判別できなかったが。それを聞き付けたSergeがしっかり乱入。これがまた独特のリズムと旋律で語りだす。もう一方のファルーカでよっぽど欲求不満がたまっていたらしく、もう止まらないと言った感じで快調にとばしまくっていた。が、俺はそんな喋りに耳がついていかず、ほとんど理解できていない。そんなとき、合間に個性的な笑い声をはさみながら、まくしたてるように喋る来客に、少々退屈といった表情のFionaと目が合う。

Serge:「あはっ、あはっ、あはっ」(個性的な笑い)
Toshiki:「あはっ、あはっ、あはっ」(真似してみる)
Fiona:(爆笑)
Serge:(???)
Fiona:「Toshikiそっくりだわ、もう一回やってよ」(泣笑)
Toshiki:(Sergeがひいちゃってるのにできるわけないだろぉ...)

すっかりつぼにはまってしまったFionaの笑いはしばらく治まらず、その後もことあるごとにSergeの笑い方の真似をせがまれることとなった。Sergeのおしゃべりはすっかりペースダウン。あいたたた、気まずいことしちゃったかねぇ。なんて横で気が付けばCaptainがちゃっかりMetteの膝枕で御機嫌の様子。おいおい、この空気なんとかしてくれよ、なぁ...。


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