008


[Charlotte and Mette]


[Temples of Karnak]


[Luxor Temple]


[Valley of the Kings]

朝Edfuに到着した直後だったと記憶している。Captainがパスポートを集めると言い出した。突然のパスポートチェックだった。そんな話は聞いていなかったし、それは他のメンバーにとっても一緒だった。この先は危険な状態なのでファルーカでの移動をただちに中止せよとの話で急遽ミニワゴンが2台手配されたが、ホルス神殿を見た後もミニワゴンは一向に来る気配はない。左の一番上の写真は、日陰でミニワゴン待ちするCharlotteとMetteを撮ったものだが、その後ろには迷彩服に身をつつんだ男が数人写っていて、右端の男は銃を持っているのがおわかりいただけると思う。だが、街はそんなにものものしい雰囲気ではなく、少し歩けば普段通り軒を列ねた土産物屋から声がかかる。

エジプトと言えば銃撃戦事件で多くの日本人観光客が亡くなったのを記憶している方もいるだろう。あれから随分と時がたち、外務省の発表する渡航情報では危険度1「注意喚起」になっていたと思う。こうした観光収入の多い国で観光地の警備を厳重にしているのは、なにかあれば観光客の足は遠のいてしまうからだ。しかし、その間の地域はというと、いつなんどき状況が変わるかわからない。そしてこんな小さな船では、有事にはひとたまりもない。以前訪問したカンボジアでもSiem ReapからPhnom Penhへはメコン川クルーズというのがあるのだが、観光客を乗せた船が船ごと襲われるという事件がちょくちょく起きていたため、その時はがらにもなく空路を選んだ。残念だが、こればっかりはどうしようもないことだった。そのあたりは他のメンバーも心得ていて、誰一人不満をもらす者はいない。

ミニワゴンでLuxorに着くと、皆それぞれに街へ散っていった。2泊3日のファルーカで寝食を共にし、皆それなりに仲良くなってはいたが、だからといってその後も行動を共にするかというと、必ずしもそうでもないのが個人旅行者のさばけたところでもあり、面白いところでもある。目的が一致すれば、行動を共にした方がなにかと便利なときもある。例えば行き先が一緒ならタクシーなどは一人より二人で乗った方が安上がりだし、暗くなってから街に到着して宿探しをしなければならないときなどは、二人の方が安全だ。しかし、そんな場合を除いては実にあっさりしたものだ。

とはいえ、個人旅行者の行動パターンは同じようなもので、同じ時間に街に着けばそこかしこで顔を合わすことになる。俺はまず宿を決めて昼食をとりに街に出た。Ramadanのおかげで開いている食べ物屋を探すのは一苦労で、やっと見つた店は思いっきり観光客向けの店だった。仕方なくアメリカンな食事を頬張っていると、TrausとFelicityがまだ宿を決めていないのか、大きなバックパックを背負って入ってきた。その足でカルナック神殿へ行くと、どこからともなくSergeが現れてシャッターを押してくれと言う。ルクソール神殿へ行けば隣のファルーカに乗っていたアメリカ人夫婦が手を振っている。そして宿に戻ると再びTrausとFelicityがロビーでくつろいでいた。と、まぁこんなものだ。

翌日、Luxor西岸を巡る現地ツアーに申し込み、集合場所でミニワゴンに乗り込むと聞き覚えのある笑い声が耳に飛び込んできた。相変わらずのテンションで喋り続けるSergeだったが、別れ際にこんな話をした。

Toshiki:「次はどこへ行くんだ?」
Serge:「Hurghadaへ行こうと思う」
Sergeはいつになく、真剣な眼差しで遠くを見つめていた。
Toshiki:「スキューバダイビングか?」
Serge:「MetteとCharlotteが行くって言ってたから...」
たまにはこんな、こってりした奴もいる...。

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